ふるさと納税は会社にバレる?事業主に渡る通知書に何が載るか

やましいことは何もないのに、会社に知られるのは気が進まない。この感覚、わりと分かります。副業でも何でもない、ただの寄附なのに、給与から引かれる住民税に触る以上どこかで会社を通るのでは、と考え始めると止まらない。

結論から言うと、会社に渡る紙に「この人はふるさと納税をしました」とは書かれません。ただし「会社には何も渡らない」というのも正確ではない。どこまでが本当かを、書類の様式レベルで確かめます。

目次

不安の中身を3つに分けると、話が早い

「会社にバレる」と一言で言っていますが、実際に心配していることは人によって違います。

心配していること実際どうか
寄附したという事実そのものが会社に伝わる伝わらない。事業主向けの様式に控除の内訳を書く欄が無い
住民税の金額が変わることで気づかれる金額は会社に渡る。ただし理由までは紙面から判別できない
自分の情報が会社の手元にあるもともと氏名・住所・個人番号は印字されている。ふるさと納税とは関係なく

1つ目が本題です。2つ目は「気づかれうるが理由は分からない」という中間の答えになる。3つ目は制度としてそうなっているので、ふるさと納税をやめても変わりません。順に見ます。

会社に届く通知書は2種類ある

給与から住民税を天引きされている人の場合、毎年5月ごろに市区町村から会社へ通知書が届きます。これが2種類あるのが、話をややこしくしている原因です。

この特別徴収税額決定通知書(以下「税額通知書」という。)は特別徴収義務者用と納税義務者用の 2 種類があり、このうち納税義務者用は、直接、従業員本人に送付されるのではなく、事業主を経由して交付される仕組みとなっている。

総務省(行政評価局 行政相談)「納税義務者用の特別徴収税額決定通知書の記載内容の秘匿」
  • 特別徴収義務者用=会社が持っておくぶん。以下「事業主用」と書きます
  • 納税義務者用=本人に渡すぶん。会社は経由するだけ

「会社を経由する」と聞くと不安になりますが、経由するのは本人宛の書類のほうです。中身が会社のものになるわけではない。

届く時期も法律で決まっています。地方税法321条の4第2項が、特別徴収の通知について期限を切っている。

市町村長が前項後段の規定により特別徴収義務者及び特別徴収義務者を経由して納税義務者に対してする通知は、当該年度の初日の属する年の五月三十一日までにしなければならない。

地方税法 第321条の4第2項(e-Gov法令検索)

実務では5月中旬ごろに会社へ届き、そこから従業員に配られます。気になる年があるなら、5〜6月に何が配られるかを1度見ておけば済む話でもある。

事業主用の紙面には、控除の内訳を書く欄が無い

ここが決着点です。同じ総務省の資料が、2種類の様式の違いを明示しています。

納税義務者用については特別徴収税額のみではなく、主たる給与以外の所得(不動産、利子、配当等)の金額や所得控除(障害者、寡婦等)の該当有無等が記載されることとなっているが、特別徴収義務者用については、そうした情報は記載されることとなっていない。

総務省(行政評価局 行政相談)同資料

様式は地方税法施行規則第2条で定められていて、事業主用が第3号様式、本人用が第3号様式別表。事業主用には、そもそも所得や控除の内訳を書く場所が設けられていません。

よくある説明の不正確なところ

「事業主用には摘要欄が無いから安心」と書かれていることがあります。これは正確ではありません。新宿区が公開している事業主用の見方(公式サンプル)には「(摘要)」欄があり、記載例として「就職」が入っています。

正しく言うなら、摘要欄はある。ただしそこに入るのは徴収の事由であって、控除の内訳ではない。欄の有無ではなく、様式上そこに何を書くことになっているかの問題です。

では事業主用には何が並ぶのか。新宿区の公式サンプルから、従業員1人分に印字される項目を拾うとこうなります。

  • 指定番号/宛名番号/市町村コード/受給者番号
  • 個人番号(マイナンバー)
  • 住所/氏名
  • 特別徴収税額(年額)
  • 納付額(6月分から翌年5月分までの月割額)
  • 変更月
  • (摘要)

寄附金額も、控除額も、寄附先の自治体名も出てきません。会社が受け取るのは「この人からいくら天引きしてください」という指示だけです。

控除額が載るのは、本人用の摘要欄

ふるさと納税の控除額そのものは、本人用の通知書に載ります。自治体の説明が具体的です。

【特別徴収(給与天引き)の場合】「給与所得等に係る市民税・都民税・森林環境税 特別徴収税額の決定・変更通知書(納税義務者用)」の摘要欄に記載しています。

西東京市「ふるさと納税(自治体への寄附)をされた方へ」

この本人用の書類が会社を経由するので、「途中で見られるのでは」という心配が出てきます。そこは行政の側でも問題になっていて、対策が進みました。

① 秘匿措置の方法としては、圧着式(5 市)と保護シール貼付(2 市)の 2 種類。
④ 秘匿措置を導入したことによる事業者からの苦情やクレームがあったとする市はなかった。

総務省(行政評価局 行政相談)同資料

圧着してあるか、シールが貼ってあるか。剥がさないと読めない形で渡している自治体があります。ただしこの資料は平成27〜28年度に一部の県の市町村を抽出して調べたもので、実施状況にはかなり幅がありました(ある県では41市町村中2市町村にとどまっていた、という記載もあります)。全国どこでも秘匿されている、とは言えません。自分の分がどうなっているかは、受け取った通知書を見れば分かります。

会社が知りうるのは「住民税の額」だけ。その理由までは分からない

ここが2つ目の不安への答えです。事業主用に載るのは特別徴収税額と月々の納付額。寄附すれば翌年度の住民税が下がるので、金額の変化そのものは会社に渡ります。

ただ、紙面から分かるのはそこまでです。住民税が低い理由になりうるものを並べると、ふるさと納税はそのうちの1つでしかありません。

  • 医療費控除を使った
  • 扶養親族が増えた
  • iDeCoの掛金が増えた
  • 住宅ローン控除が効いている
  • 前年の残業が減って所得が下がった
  • ふるさと納税をした

事業主用の紙面には、どれが理由かを書く欄がありません。「勘のいい経理なら気づく」と書かれることがありますが、気づけるのは「去年より住民税が低い」ところまで。そこから先は推測になります。

住民税がどう決まって、どこで控除が効いているのかは住民税での確認の仕方をまとめた記事に書きました。自分の通知書を読めるようになると、この手の不安はだいたい消えます。

逆に、正直に言っておきたいこと

「会社には何も渡らないので安心してください」と締めるのは簡単ですが、それは言い過ぎです。事業主用には個人番号(マイナンバー)・住所・氏名が印字されています。新宿区のサンプルで確認できる範囲の事実です。

もっとも、これはふるさと納税をしてもしなくても同じ。特別徴収の仕組みそのものに由来する話で、寄附によって増える情報ではありません。「寄附したことで会社に渡る情報が増えるか」という問いなら、答えは増えない。

年末調整の書類に書くんじゃないの?と聞かれることがありますが、ふるさと納税は年末調整では扱えません。だから会社に申告する場面自体がありません。

それでも気になる人が、実際にやれること

ワンストップ特例で完結させる

寄附先が5団体以内なら、会社を通さず自治体とのやりとりだけで終わります。確定申告をすると税務署も絡みますが、いずれにせよ会社に書類は行きません。手続き自体はワンストップ特例の記事に。

翌年の通知書で、自分の目で確かめる

5〜6月ごろに渡される本人用の通知書。圧着やシールで秘匿されているか、摘要欄に控除額が入っているかを見る。不安のまま想像するより、1回見たほうが早い。

秘匿措置が気になるなら市区町村に聞く

圧着かシールか、そもそも導入しているか。これは自治体ごとの運用なので、答えられるのは住んでいる市区町村だけです。

ここまで確かめれば、あとは普通に寄附するだけです。寄附金額の帯が決まっている人は家電を金額帯で整理した記事が選びやすい。制度の全体像から押さえたいならふるさと納税の仕組みを整理した記事、サイト選びで迷っているならふるなびの評判を整理した記事もあります。

申し込みは上限を確かめてからで大丈夫。見るだけなら会員登録は要りません

同じところで悩む人が聞くこと

会社に届く書類に、寄附先の自治体名は載りますか

載りません。事業主用の様式には、所得や控除の内訳を記載する欄が設けられていません。新宿区の公式サンプルで印字される項目を見ても、寄附先や寄附額に当たるものはありません。

住民税が下がったら、経理に理由を聞かれませんか

聞かれたとして、答える義務はありません。会社は市区町村から通知された額を天引きするだけで、理由の説明を求める立場にない。実際、住民税が下がる理由はふるさと納税以外にもいくつもあります。

確定申告をすると会社に連絡がいきますか

ふるさと納税の寄附金控除だけなら、会社に連絡がいく仕組みはありません。申告の内容は税務署と市区町村の間で処理され、会社に届くのは住民税額の通知だけです。

本人用の通知書が開いた状態で配られました

秘匿措置は自治体ごとの運用で、全国一律ではありません。総務省の資料でも、措置を講じないまま送付している市町村があると指摘されています。気になるなら、お住まいの市区町村に運用を確認してください。

副業が会社に知られるのを防ぐのと同じ方法は使えますか

そもそも防ぐ必要がありません。ふるさと納税は所得が増える話ではなく、控除の話です。事業主用の紙面には控除の内訳が出ないので、住民税の徴収方法をいじる動機自体がない。

持ち帰るのはこの4つ

  • 会社に渡る事業主用の通知書には、控除の内訳を記載する欄が無い。寄附の事実は載らない
  • 「摘要欄が無いから安心」は不正確。摘要欄はあるが、控除の内訳は印字されない
  • 控除額が載るのは本人用の摘要欄。会社は経由するだけで、圧着やシールで秘匿している自治体がある(全国一律ではない)
  • ただし事業主用には個人番号・住所・氏名が印字される。「何も渡らない」とは言えない。ふるさと納税の有無とは関係なく、もともとそうなっている

様式の中身は総務省の資料と自治体の公式サンプルで確認したものです。通知書の書式や秘匿措置の運用は市区町村ごとに違うので、自分の分についてはお住まいの市区町村にご確認ください。


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この記事を書いた人

ふるさと納税の制度と実務を、総務省の告示やポータル各社の公表情報といった一次情報をたどって検証している編集チームです。控除上限額の考え方、ワンストップ特例と確定申告の使い分け、返礼品の選び方まで、根拠を示しながら整理しています。なお当サイトは株式会社アイモバイルが運営するものではなく、第三者が運営する情報サイトです。

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