「年収500万円ならいくらまで」を調べて表の行を引いた、その次の話です。
早見表の数字は、いくつかの前提を置いて機械的に計算したもの。当サイトの早見表も前提を10個開示していますが、そのうち1個だけは手元の書類で実額に置き換えられます。社会保険料です。ここを埋めるだけで、目安と実額の距離がかなり縮まる。
この記事は表を作り直す話でも、計算式を解説する話でもありません。源泉徴収票と住民税決定通知書の、どの欄の数字をどう使うかだけを扱います。
早見表と自分の数字がずれる、いちばん大きい原因
世の中に出回っている年収別の表は、どれも各社の独自試算です。総務省は年収別の目安表を公表していない。だから表ごとに数字が違うのですが、差の出どころはだいたい決まっています。
- 社会保険料をいくらと置いたか(14%なのか15%なのか16%なのか)
- どの年分の制度で計算したか
- 「共働き」「扶養」の定義
2つ目と3つ目は、表の注記を読めば合わせられます。残るのが1つ目。当サイトの表は社会保険料を給与収入の15%と仮定していて、たとえば給与収入500万円なら社会保険料75万円として計算しています。
ここは人によって普通にずれます。健康保険組合か協会けんぽか、介護保険料の対象年齢か、企業年金があるか。その実額は源泉徴収票に書いてあります。仮定を実額に差し替えられるなら、そうしたほうが早い。
源泉徴収票のどの欄を使うか
欄が多くて迷いますが、使うのは5つだけです。国税庁の法定調書の手引に各欄の説明があるので、それをもとに役割を整理します。
| 欄 | 正式な欄名(令和7年分様式) | 中身 | この記事での使い道 |
|---|---|---|---|
| ③ | 支払金額 | その年に支払の確定した給与等の総額 | いわゆる年収。早見表の行を引く値 |
| ④ | 給与所得控除後の金額(調整控除後) | 給与所得の金額。所得金額調整控除があればその適用後 | 所得の大きさの確認 |
| ⑤ | 所得控除の額の合計額 | 年末調整で差し引いた所得控除の合計 | ④−⑤でおおよその課税所得が見える |
| ⑭ | 社会保険料等の金額 | 給与から控除した社会保険料+申告書で控除した分+小規模企業共済等掛金 | ここが主役。15%仮定を実額に置き換える |
| ⑯ | 住宅借入金等特別控除の額 | 年末調整で計算した住宅ローン控除の額 | 併用時の判定に使う |
⑭の定義は逐語でこうなっています。
給与等を支払う際にその給与等から控除した社会保険料の金額、「給与所得者の保険料控除申告書」に基づいて控除した社会保険料の金額及び小規模企業共済等掛金の額の合計額
国税庁「令和7年分 給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引」(社会保険料等の金額欄)
小規模企業共済等掛金の額については、これを内書きしてください。
iDeCo(小規模企業共済等掛金)を給与天引きでやっている人は、その分が内書きで重なっています。シミュレーションの「社会保険料」欄に入れる値と、iDeCoの入力欄に入れる値を二重に数えないよう、内書きの数字を分けて見てください。
④の欄名は「給与所得控除後の金額」ではなく、令和7年分様式では「給与所得控除後の金額(調整控除後)」です。手引にも「所得金額調整控除の適用がある場合には、所得金額調整控除の額を控除した後の金額を記載してください」とあります。給与収入850万円を超えていて23歳未満の子がいる人などは、この欄がすでに控除後の数字になっている。「給与所得控除後の金額」という名前のつもりでシミュレーションに入れると値がずれます。また④と⑤は「年末調整を実施した受給者の源泉徴収票にのみ記載します」とされているので、年末調整をしていない年は空欄です。その場合は⑭から組み立て直すことになります。
仮定を実額に置き換える手順
支払金額(③)と社会保険料等の金額(⑭)の2つ。⑭に小規模企業共済等掛金の内書きがあれば、それも別に控えておきます。
これが早見表の「15%」に対応する数字です。14%台なら表より枠が広め、16%台なら狭めに出ている、という当たりがつきます。ぴったり15%なら、表の数字をそのまま信用していい。
社会保険料が仮定より大きいと、住民税の課税所得が下がる → 所得割額が下がる → 特例分の20%の枠も縮む。つまり上限は表より小さく出る方向に動きます。小さければ逆。金額まで自分で出す必要はなくて、向きが分かれば十分です。
給与収入と配偶者の有無しか聞かない簡易版だと、この実額は入りません。社会保険料や扶養の人数まで入力できるほうを選んでください。ふるなびにも入力項目の多い版が用意されています。
手引には「控除額が算出所得税額を超える場合には、算出所得税額を限度に記載します」とあります。つまり⑯が算出所得税額で頭打ちになっているなら、所得税から引ききれていないサイン。その状態で確定申告を選ぶと結果が変わる可能性があります。詳しくは住民税側の記事で条文から整理しました。
「社会保険料が増えると上限が下がる向きに動く」というのは、当サイトが控除の組み立て(住民税特例分が所得割額の20%で頭打ちになる構造)から読んだ内容です。この向きについて税務当局が個別に示した資料は確認できていません。金額を確定させたいときは、入力項目の多いシミュレーションか、お住まいの市区町村への問い合わせで確かめてください。
今年の源泉徴収票は、今年のうちには手に入りません
ここで詰まります。ふるさと納税の申込みは12月31日までに終える必要があるのに、その年の源泉徴収票はまだ存在しない。交付の期限は法律で決まっています。
居住者に対し国内において…給与等の支払をする者は、…その年において支払の確定した給与等について、その給与等の支払を受ける者の各人別に源泉徴収票二通を作成し、その年の翌年一月三十一日まで(年の中途において退職した居住者については、その退職の日以後一月以内)に、一通を税務署長に提出し、他の一通を給与等の支払を受ける者に交付しなければならない。
所得税法 第226条第1項(e-Gov法令検索)
条文が「その年において支払の確定した給与等について」翌年1月31日まで、と定めている以上、その年の分は年が明けないと出てこない。寄附する時点で手元にあるのは前年分です。
なので実務上の選択肢は2つしかありません。
| やり方 | 向き・不向き |
|---|---|
| 前年分の源泉徴収票を使う | 収入も社会保険料も前年と大きく変わっていない人なら、これで十分近い。転職・昇給・育休があった年は使えない |
| 当年の給与明細から見積もる | 直近の明細の社会保険料を12倍し、賞与分を足す。年収が動いた年はこちらのほうが近い。手間はかかる |
上の整理は、所得税法226条の交付期限と、寄附の締切が12月31日であることから当サイトが導いた結論です。「当年の限度額計算に前年分の源泉徴収票を使ってよい/使うべき」と国税庁や総務省が述べた文書は、確認できませんでした。総務省は限度額について「具体的な計算は、お住まいの市区町村にお問い合わせください(ただし、お住まいの自治体によって、控除の対象となるふるさと納税額の上限はお答えできない場合があります)」と案内しているだけです。上限ぎりぎりを攻めるなら、余裕を残す前提で組むほうが現実的です。
正直なところ、ここは完璧を目指しても報われにくい部分です。12月のボーナスや残業代で年収は最後まで動く。数千円の余白を残しておいて、翌年に実額が出たら「今年はここまでいけたな」と記録しておく。その繰り返しのほうが精度が上がります。
ついでに1つ。「源泉徴収票は添付不要になった」という話がありますが、国税庁 No.1120 の注意事項は「ただし、確定申告書を作成する際には引き続き給与所得の源泉徴収票が必要となります」と続きます。添付が要らなくなっただけで、数字を書き写す紙としては要る。捨てないでください。
住民税決定通知書から逆算するときに、踏みやすい穴
もう1つの材料が、5〜6月に届く住民税の決定通知書です。ここに載っている所得割額は、あなたの所得と控除で実際に計算された結果なので、仮定を置かずに済みます。逆算の式そのものは限度額の決まり方の記事に置いてあるので、ここでは使うときの注意だけ。
まず、通知書の所得割額をそのまま20%してはいけません。横浜市が明示しています。
ご覧いただいている通知書の年度に、調整控除以外の税額控除がある場合は、枠内の所得割額がその分減額されて記載されていますので、記載されている額の20%…が特例控除額の限度額とならない場合があります。
横浜市「市民税・県民税の寄附金税額控除」
住宅ローン控除や配当控除がある人は、印字されている所得割額がすでに小さくなっている。そこに20%をかけると、限度額を実際より小さく見積もることになります。税額控除が調整控除だけの人なら、この方法はそれなりに使えます。
もう1つ。通知書に載っているのは前年の所得に対する住民税です。今年の収入が動いていれば、当然ずれます。源泉徴収票のときと同じ制約が、ここにも付いてくる。
共働き、年の途中で年収が動いた人
夫婦の枠は足し算できません
控除は個人ごとに計算されます。世帯で合算する仕組みはありません。夫婦それぞれの源泉徴収票を出してきて、別々に置き換えてください。
そして寄附の名義は、控除を受ける本人。配偶者名義のカードで申し込むと、名義がずれて控除が受けられない場合があります。共働きで「枠の大きいほうにまとめる」のは合理的ですが、そのときは申込者名も支払方法も、その人に揃えること。
なお早見表の「共働き」は、配偶者控除も配偶者特別控除も使っていない状態を指します。夫婦とも働いていても配偶者の収入が低くて配偶者控除が使えるなら、表の上では別の列に近づきます。「共働き」という言葉で列を選ばず、配偶者控除を使っているかどうかで選んでください。
転職・育休・昇給があった年は、前年分が使えない
年の途中で退職した人には、退職の日以後1か月以内に源泉徴収票が交付されます(所法226条1項)。転職した年は、前職の源泉徴収票と現職の見込みを足す形になる。前年分をそのまま使うと大きく外します。
育休や休職で収入が落ちた年も同じ。上限は年収に比例せず段差がある構造なので、去年の感覚で寄附すると超えます。こういう年は12月の給与が確定してから金額を決めるのがいちばん安全です。
枠のあたりがついたら、寄附先を探す段階に移れます。ポータル側の話はふるなびの評判と使いどころにまとめました。
金額の絞り込みは一覧の左側から。申し込みは枠を決めてからで大丈夫です
実額で出そうとすると出てくる疑問
- 年収は額面ですか、手取りですか
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額面です。源泉徴収票の「支払金額」に当たります。手取りで表を引くと、枠を小さく見積もることになります。
- シミュレーションの「社会保険料」欄には、源泉徴収票のどの数字を入れますか
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「社会保険料等の金額」欄の数字です。ただしこの欄には小規模企業共済等掛金(iDeCoなど)が内書きで含まれているので、iDeCoを別の入力欄に入れるツールでは二重に数えないよう注意してください。
- 去年の源泉徴収票を今年の計算に使っていいですか
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その年の源泉徴収票は翌年1月31日までに交付される決まりなので、寄附する時点では存在しません。前年分か給与明細からの見積りで代用するしかない、というのが実情です。ただし「前年分を使ってよい」と国税庁や総務省が述べた文書は確認できていません。収入が大きく動いた年は前年分では外します。
- 源泉徴収票をなくしました
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勤務先に再交付を依頼してください。所得税法226条は交付を義務づけているので、依頼できる性質のものです。なお「確定申告書への添付が不要になった」からといって不要になったわけではなく、国税庁も申告書の作成には引き続き必要だと注意しています。
- 住民税の通知書の所得割額を20%すれば限度額が出ますか
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税額控除が調整控除だけの人なら目安として使えます。住宅ローン控除や配当控除がある人は、印字されている所得割額がその分小さくなっているので合いません。横浜市が公式に注意している点です。
- 共働きです。夫婦の枠を合わせて1人分にまとめられますか
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枠は個人ごとなので合算はできません。それぞれの年収で別々に計算し、寄附する本人の名義で申し込んでください。名義がずれると控除が受けられない場合があります。
やることは、結局この4つ
- 早見表の仮定のうち、実額に置き換えられるのは社会保険料。源泉徴収票の「社会保険料等の金額」を使う
- 欄名は「給与所得控除後の金額(調整控除後)」。所得金額調整控除の適用者は控除後の数字が入っているので、入力値を取り違えない
- その年の源泉徴収票は翌年1月31日までに交付される(所法226条1項)。寄附時点では前年分か給与明細からの見積りしかない
- 通知書の所得割額の20%は、調整控除以外の税額控除がある人には当てはまらない
この記事は国税庁の法定調書の手引・タックスアンサー、e-Gov法令検索の条文本文、自治体公式の説明をもとに整理したものです。置き換えの手順と「前年分で代用するしかない」という整理は、条文からの帰結として本サイトが書いたもので、当局が個別に示した文書は確認できていません。税額の判断はお住まいの市区町村または税務署にご確認ください。




