ふるさと納税の限度額の決まり方|3つの控除と「2割の壁」を総務省の計算式で確認

限度額を調べるつもりでシミュレーションを3つ回したら、3つとも違う金額が出た。たいていここで止まります。

どれかが壊れているわけではありません。入力欄が2つのツールと8つのツールでは、拾っている条件の数がそもそも違う。入力が少ないツールの数字は、その前提に当てはまる人にだけ合います。「どれが正しいか」ではなく「どの前提で計算した数字か」を見るしかない、というのが実際のところです。

なのでこの記事は、先に年収別の目安表を置きます。ただし数字だけ並べても同じことの繰り返しになるので、計算に使った前提を10個ぜんぶ書いた上で出します。前提さえ見えていれば、自分の条件とどこがずれるかは自分で判断できます。

目次

年収別の控除上限額の目安(前提を全部書いた版)

その前に:総務省は年収別の早見表を出していない

あまり知られていませんが、総務省は年収別の目安表を公表していません。2026年9月時点で、総務省ふるさと納税ポータルサイトの「税金の控除について」(全17,885字)を取得して全文検索すると、「目安」「年間上限」「給与収入」「独身」「共働き」「扶養親族」「早見」は、どれも1件も出てきません。

代わりに書いてあるのはこれです。

具体的な計算は、お住まいの市区町村にお問い合わせください。(ただし、お住まいの自治体によって、控除の対象となるふるさと納税額の上限はお答えできない場合があります。

総務省ふるさと納税ポータルサイト「税金の控除について」

総務省が年収別の数字を出しているのは給与収入1,000万円以上の帯だけで、それも後述する2027年の改正を説明するための資料です。

つまり、世の中で見かける早見表はすべて各社が自前で計算したもの。各社の表が間違っているという話ではありません。社会保険料を何%で置いたかといった前提が違えば数字が変わるのは当たり前で、ただその前提が書かれていないことが多い。ここでは先に出します。

給与収入300万円〜1,000万円の目安

給与収入と家族構成だけで機械的に計算した目安です。令和8年分(2026年中の寄附/令和9年度の住民税)の制度で計算しています。前提は表のすぐ下に10個まとめました。自分の条件と違う項目があれば、その分ずれます。

給与収入独身または共働き夫婦(配偶者に収入なし)夫婦+高校生の子1人
300万円28,000円19,000円11,000円
500万円57,000円49,000円40,000円
700万円108,000円86,000円78,000円
1000万円177,000円167,000円153,000円
当サイトの試算(令和8年分)から4行だけ抜粋。前提10個と13行×5構成の全体は限度額早見表の記事にあります。

この記事の主題は「なぜその金額になるのか」なので、引くための表そのものは早見表の記事に分けました。年収と家族構成で引きたいだけならそちらのほうが早いです。ここから先は、この数字がどう組み上がっているかを条文で追います。

この表の前提(10個)
  • 給与収入のみ。副業・不動産・譲渡などの所得はなし
  • 社会保険料は給与収入の15%と仮定。各社の早見表でいちばん差が出るのがここです
  • 住宅ローン控除・医療費控除・iDeCoなど、その他の控除はなし
  • 令和8年分(2026年中の寄附/令和9年度の住民税)の制度で計算。給与所得控除・所得税の基礎控除とも令和8年分の額を使っています
  • 住民税の基礎控除43万円/配偶者控除33万円/扶養控除33万円(特定扶養親族は45万円)
  • 所得税の基礎控除は合計所得金額に応じて104万円/67万円/62万円(国税庁 No.1199)
  • 令和19年中の寄附までは、所得税の税率に復興特別所得税2.1%を加えた率で計算。特例分の割合は84.895% / 79.79% / 69.58% / 66.517% / 56.307%…(総務省「税金の控除について」の注記)
  • 住民税の所得割は10%(調整控除を適用したあと)。住民税の課税所得は1,000円未満切り捨て
  • 所得金額調整控除(子ども等)を考慮しています。給与収入850万円超で23歳未満の扶養親族がいる場合に自動で適用される控除です(国税庁 No.1411)
  • ふるさと納税以外の税額控除はなし。政令指定都市かどうかで結果は変わりません(道府県分と市町村分の合計は同じ)

1行ぶんを、途中の数字まで全部出しておく

前提だけ並べても、途中で何をしているかは見えません。表のいちばん使われそうなところ、給与収入500万円・独身の1行を、最後まで書き出します。

計算の段金額
給与所得(500万円 − 給与所得控除144万円)3,560,000円
社会保険料(給与収入の15%と仮定)750,000円
住民税の課税総所得金額(− 基礎控除43万円 − 社会保険料)2,380,000円
所得税の基礎控除(令和8年分・合計所得356万円)1,040,000円
人的控除差調整額(5万円 +〈104万円 − 48万円〉)610,000円
調整控除2,500円
住民税の所得割額(2,380,000 × 10% − 2,500)235,500円
特例分の割合(2,380,000 − 610,000 = 1,770,000 → 所得税の税率5%の区分)84.895%
全額控除される寄附額の上限(235,500 × 20% ÷ 84.895% + 2,000)57,000円
令和8年分の制度で計算。1,000円未満は切り捨て。各段の根拠は地方税法 第37条・第37条の2第11項第1号、国税庁 No.1199・No.1410。割合は復興特別所得税を加えた率です。

「人的控除差調整額」という聞き慣れない項目が途中に出てきます。ここが上限額の効きどころで、後半の章でもう一度出てきます。いまは「所得税の基礎控除が中に入っている」とだけ見ておいてください。

総務省のモデルケースと突き合わせると、約3,000円ずれた

この表がどれくらい当たるのかは、総務省が資料で出しているモデルケースと比べれば分かります。年収1,000万円・独身または共働きで寄附上限額18万円(内訳は後述します)。同じ条件の本サイトの試算は177,000円です。

差は約3,000円。出どころははっきりしていて、社会保険料をいくらと置いたかの違いです。総務省側は社会保険料の前提を公表していないので、こちらが15%で置いた分だけ住民税の課税所得が動き、そのまま上限額の差になります。

18万円に対して1.7%ほどの差です。裏を返すと前提を1つ変えるだけで数千円動くということで、これが「早見表はどこまでいっても目安」と言い切れる根拠になります。精度の限界を隠すより、ずれる幅を先に見せたほうが使いやすいはずです。

「夫婦(配偶者に収入なし)」と「共働き+高校生の子1人」は、800万円まで1円も変わらない

表の3列目と4列目を上からたどってください。300万円から800万円まで、11行ぜんぶ同じ数字です。

理由は住民税側の控除額にあります。住民税の配偶者控除は33万円、一般の扶養控除も33万円。特例分の計算で差し引く人的控除差調整額に取り込まれる金額(地方税法第37条第1号イ)も、配偶者1人・扶養親族1人のどちらも5万円の加算で同額です。住民税の計算上、収入のない配偶者1人と高校生の子1人は同じ扱いになります。この2つを別の列で載せている早見表は多いですが、この帯なら見比べて悩む必要はありません。

ところが900万円の行で、143,000円と141,000円に分かれます。1,000万円では167,000円と163,000円。境目は給与収入850万円です。

効いているのは所得金額調整控除(子ども等)。給与収入850万円を超えていて、23歳未満の扶養親族がいる人に自動で適用される控除で、〈給与収入 − 850万円〉の10%(上限15万円)が給与所得から引かれます(国税庁 No.1411)。配偶者は対象になりません。だから850万円を超えたところで、子どもがいる側にだけ効きはじめる。

向きが直感と逆なので、ここは注意が要ります。控除が増えると、ふるさと納税の上限額は下がります。所得が圧縮されて住民税の所得割額が小さくなり、特例分の2割の枠もその分小さくなるからです。税負担が軽くなること自体は得ですが、寄附できる枠は逆に狭くなる。年収900万円台で子育て中の人は、この1列ぶんを読み違えると数千円ずれます。

年収650万円から700万円で、上限が2万円以上跳ねる

独身の列を上からたどると、550万→600万で8,000円増、600万→650万も8,000円増。ところが650万→700万だけ85,000円から108,000円へ、23,000円跳ねます。

上限額は年収に比例しません。階段状です。

跳ねる理由は2つ重なっています。1つは、特例分の割合の区分をまたぐこと。区分を決めるのは〈住民税の課税総所得金額 − 人的控除差調整額〉で、年収650万円では274.5万円、700万円では348万円。330万円の境目を越えるので、割合が79.79%から69.58%に下がります。特例分の上限(所得割額の2割)を割合で割り戻して寄附額を出すので、割る数が小さくなれば上限額は一段上がる。

もう1つが、その差し引く額そのものの段差です。年収700万円では給与所得が520万円になり、所得税の基礎控除が104万円から67万円に下がります。人的控除差調整額はこれを取り込んでいるので61万円から24万円へ一気に縮む。差し引く額が小さくなるぶん、区分の境目を勢いよくまたぐことになります。

扶養がある人は課税所得がその分下がるので、跳ねる場所も右にずれます。夫婦(配偶者に収入なし)の列なら700万→750万で86,000円から109,000円。自分の列で探してください。

使いどころは1つ。昇給やボーナスで年収が境目をまたぐ年は、上限の伸びが想像より大きい。逆に境目の手前で止まった年に去年の感覚で寄附すると、超えます。

「子どもがいるから上限が下がる」は高校生以上の話

表の家族構成に「中学生以下の子」が出てこないのは、載せ忘れではありません。中学生以下の子は扶養控除の対象外(児童手当があるため)なので、住民税の計算では控除の人数に入らない。上限額は独身の列と同じになります。

ただし給与収入850万円を超えると、さきほどの所得金額調整控除が効きます。こちらは23歳未満なら年齢を問わず対象なので、中学生以下の子でも上限額は独身より少し下がる。本サイトの試算では、給与収入900万円で152,000円が151,000円、1,000万円で177,000円が172,000円です。

「子どもがいるから枠は少ないだろう」と自分で低く見積もっていた人は、いちばん左の列を見てください。はっきり下がりはじめるのは高校生の年代からです。大学生の年代は特定扶養親族として控除額がさらに大きくなるぶん、上限はもう一段下がります。

「限度額」と呼ばれている額は、正確には何の額なのか

総務省の資料では「寄附上限額」という言い方をしていて、その定義は適用下限額の2,000円を除いた全額が控除される寄附額です。つまり「これ以上は寄附できません」という壁ではありません。

上限を超えて寄附することは普通にできます。超えた部分が控除されずに自分の負担として残るだけ。だから「超えたら大損」ではなく、正確には「超えた分はただの寄附になる」。この違いを押さえておくと、年末に金額を詰める時の判断が楽になります。

限度額は、3つの控除の積み上げで決まっている

控除は1か所から引かれるのではなく、所得税・住民税(基本分)・住民税(特例分)の3本立てです。総務省が示している計算式はこうなっています。

控除の区分計算式対象となる寄附額の上限
所得税からの控除(ふるさと納税額 − 2,000円)× 所得税の税率総所得金額等の40%
住民税からの控除(基本分)(ふるさと納税額 − 2,000円)× 10%総所得金額等の30%
住民税からの控除(特例分)(ふるさと納税額 − 2,000円)×(100% − 10% − 所得税の税率)住民税所得割額の20%(後述)
出典:総務省ふるさと納税ポータルサイト「税金の控除について」

3つ並べると、式の作りがそのまま見えてきます。所得税率を足して引いてを繰り返した結果、3本の合計は(ふるさと納税額 − 2,000円)にぴったり一致する。所得税率が高い人も低い人も、合計が変わらないように組んである。「自己負担は2,000円」という説明が成り立つのは、この設計のおかげです。

なお3行目の(100% − 10% − 所得税の税率)は説明用の書き方で、法律の条文はこの部分を割合の表で直接定めています(地方税法第37条の2第11項第1号)。しかも総務省の注記どおり、令和19年中の寄附までは所得税の税率に復興特別所得税2.1%を加えた率を使うので、実際に当たるのは84.895%・79.79%・69.58%…という半端な数字になります。あとで出てくる話はこの表のほうを使います。

逆に言えば、この3本のどれかが上限に当たった瞬間、合計は(ふるさと納税額 − 2,000円)に届かなくなります。そこが限度額の正体です。

実際にブレーキをかけているのは、住民税特例分の「2割」の壁

3本のうち、いちばん金額が大きくなるのが住民税の特例分です。所得税率20%の人なら、(寄附額 − 2,000円)のおよそ70%がここから引かれる計算になる。そしてこの特例分にだけ、別枠の頭打ちがあります。

特例分((3)で計算した場合の特例分)が住民税所得割額の2割を超える場合は、上記(3)’の計算式となります。この場合、(1)、(2)及び(3)’の3つの控除を合計しても(ふるさと納税額−2,000円)の全額が控除されず、実質負担額は2,000円を超えます。

総務省ふるさと納税ポータルサイト「税金の控除について」

特例分が住民税所得割額の2割を超えると、式が〈住民税所得割額 × 20%〉に置き換わって、そこで止まる。そして総務省自身が「実質負担額は2,000円を超えます」と書いている。限度額とは、この2割の壁に当たる直前の寄附額のことです。

ここを飛ばして「2,000円の負担で全額控除」とだけ説明している解説はわりとあります。でも壁を越えた側から見ると話は逆で、負担は2,000円では収まりません。

細かいけれど落とすと数字がずれる点

特例分の式に出てくる所得税の税率は、総務省の注記によると「個人住民税の課税総所得金額から人的控除差調整額を差し引いた金額により求めた所得税の税率」であり、所得税からの控除で使う税率と異なる場合があります。条文の割合表も、区分を決めるのはこの〈課税総所得金額 − 人的控除差調整額〉です。自分で電卓を叩くと合わない理由の多くがこれで、次の章で出てくる「令和8年分から上限が下がる人がいる」話も、ここが起点になります。

総務省のモデルケースに数字を置いてみる

式だけだと感覚がつかめないので、総務省が告示改正の資料で示しているモデルケースをそのまま使います。給与収入1,000万円・独身または共働き、寄附上限額18万円というケース。

内訳金額
寄附額180,000円
所得税の所得控除36,000円
住民税からの控除(基本分)18,000円
住民税からの控除(特例分)124,000円
自己負担2,000円
出典:総務省「ふるさと納税について(指定基準に係る告示改正)」令和8年3月24日 p.7

36,000+18,000+124,000で178,000円。寄附額18万円から2,000円を引いた額とぴったり合います。前の章で書いた「3本の合計が(寄附額 − 2,000円)になる」が、そのまま数字で確認できるケースです。

ちなみにこれは「年収1,000万円なら18万円」という意味ではありません。冒頭の表で同じ条件を計算すると177,000円。社会保険料の置き方だけで約3,000円ずれますし、2割の壁の位置は扶養や他の控除でも動きます。

所得税の基礎控除の引上げで、令和8年分から上限額が下がる人がいる

令和7年分から所得税の基礎控除が48万円から最高95万円に、令和8年分は最高104万円に上がりました。金額が金額なので、「ふるさと納税の枠も増えるのでは」と考えるのが自然です。

ところが条文をたどると、動くのは逆方向でした。増える人はいない一方で、下がる人が出てきます。いま出回っている数字とは食い違って見える話なので、根拠を全部出したうえで書きます。

年収500万円・独身という同じ条件のまま、年分だけ変えて並べるとこうなります。給与所得はどの年分も356万円、社会保険料は75万円(給与収入の15%)で固定しています。

年収500万円・独身令和6年分以前令和7年分令和8年分
所得税の基礎控除48万円68万円104万円
所得税の課税所得(356万円 − 社会保険料75万円 − 基礎控除)233万円213万円177万円
所得税の税率10%10%5%
人的控除差調整額5万円25万円61万円
特例分の割合(復興特別所得税込み)79.79%79.79%84.895%
全額控除される寄附額の上限61,000円61,000円57,000円
本サイト試算。社会保険料は給与収入の15%と仮定し、他の控除はなしとした目安です。

見どころは令和7年分と令和8年分のあいだです。令和6年分以前と令和7年分は、基礎控除が48万円から68万円に増えても上限額は61,000円のまま動いていません。所得税の課税所得が233万円から213万円に下がっただけで、税率10%の区分に収まっているからです。ところが令和8年分は課税所得が177万円まで下がり、税率の区分が5%に切り替わる。ここで上限額が57,000円へ動きます。

控除が増えたのに枠が減る、その順番

  1. 所得税の基礎控除が増えて、所得税の課税所得が下がる(213万円 → 177万円)
  2. 課税所得が下がると、所得税の税率の区分も下がる(10% → 5%)
  3. 税率が下がるぶん、所得税から戻ってくる分が減る
  4. 減った分は住民税の特例分が肩代わりする(割合が79.79% → 84.895%に上がる)
  5. ところが特例分だけは住民税所得割額の20%で頭打ちになる
  6. 割合が大きいほど、より小さい寄附額でその頭打ちに到達する
  7. 結果、全額控除される寄附額の上限が下がる

「3本の控除の合計が(寄附額 − 2,000円)になるよう組んである」という前の章の設計が、ここで効いてきます。所得税側が引き受ける分が減れば、住民税の特例分がその分を引き受ける。けれど特例分は2割で止まる。止まる位置を決めているのは住民税の所得割額で、住民税の基礎控除は43万円のまま動いていないので、所得割額も動きません。割り戻す式でいえば分子はそのまま、分母だけ大きくなる。答えは小さくなります。

条文にはこう書いてある

効いているのは、特例分の計算で課税所得から差し引く「人的控除差調整額」の定義です。地方税法第37条の2第11項第1号(市町村民税は第314条の7第11項第1号)に、こう書かれています。

当該課税総所得金額から当該納税義務者に係る前条第一号イに掲げる金額と当該納税義務者の前年分の所得税に係る所得税法第八十六条第二項に規定する基礎控除の額(略)から四十八万円を控除して得た額(当該控除して得た額が零を下回る場合には、零とする。)との合計額(略「人的控除差調整額」略)を控除した金額

地方税法 第37条の2第11項第1号(e-Gov法令検索)

読み替えると、人的控除差調整額は〈第37条第1号イの金額〉+〈所得税の基礎控除 − 48万円〉。後半に所得税の基礎控除がそのまま入っています。令和8年分で基礎控除が104万円になれば、104万 − 48万 = 56万円が足される。年収500万円・独身なら5万円+56万円で61万円。令和7年分(基礎控除68万円)は5万円+20万円で25万円でした。

そして特例分の割合は、この人的控除差調整額を引いたあとの金額で区分が決まります。同じ第37条の2第11項第1号の表です。ただし総務省が「令和19年中の寄附までは、所得税の税率は復興特別所得税の税率を加えた率となります」と注記しているとおり、いま実際に適用されるのは右の列の率です。

課税総所得金額 − 人的控除差調整額所得税の税率条文(本則)の割合令和19年中の寄附まで適用される割合
195万円以下5%85%84.895%
195万円超 330万円以下10%80%79.79%
330万円超 695万円以下20%70%69.58%
695万円超 900万円以下23%67%66.517%
900万円超 1,800万円以下33%57%56.307%
1,800万円超 4,000万円以下40%50%49.16%
4,000万円超45%45%44.055%
出典:地方税法 第37条の2第11項第1号(e-Gov法令検索)/右列は総務省「税金の控除について」の注記にもとづき、90% − 所得税の税率 × 1.021 で算出。

年収500万円・独身の住民税の課税総所得金額は238万円。ここから引くと、令和7年分は238万 − 25万 = 213万円で「195万円超330万円以下」の79.79%。令和8年分は238万 − 61万 = 177万円で「195万円以下」の84.895%になります。

引いたあとの金額が、上の表の「所得税の課税所得」と一致しているのに気づいたでしょうか。人的控除差調整額は、住民税側の課税所得を所得税側の課税所得に合わせるための調整項です。だから所得税の基礎控除の引上げが、そのまま入ってくる。

まぎらわしい「五万円」は、別の条文の話

ここで取り違えやすいのが、調整控除で使う「人的控除の差」です。こちらは地方税法第37条(市町村民税は第314条の6)で、基礎控除ぶんが定額で書かれています。

五万円に、当該納税義務者が次の表の上欄に掲げる者に該当する場合には、当該納税義務者に係る同表の下欄に掲げる金額を合算した金額を加算した金額

地方税法 第37条第1号イ(e-Gov法令検索)

この5万円は所得税の基礎控除に連動しません。ここだけを見ると「所得税側が104万円になっても関係ない」と読めます。

ただしこれは調整控除(第37条)の話であって、特例分の計算に使う人的控除差調整額(第37条の2第11項第1号)とは別物です。後者は第37条第1号イの金額を取り込んだうえで、さらに〈所得税の基礎控除 − 48万円〉を足す構造になっている。同じ条文群に似た用語が2つ並んでいるので、条番号まで見ないと逆の結論になります。

よく見る「61,000円」と食い違うのは、年分が切り替わったから

年収500万円・独身で調べると、多くの早見表が61,000円前後を示します。この記事の表は57,000円なので、並べると食い違って見える。

ただしこれは、どちらかが間違っているという話ではありません。上の年分別の表のとおり、61,000円は令和6年分以前・令和7年分としては正しい金額です。同じ条件でも令和8年分になると57,000円になる。年分が切り替わったことで変わった、というだけのことです。

この差がまだ広く共有されていない理由も、たぶんはっきりしています。令和7年分では影響が出ないからです。基礎控除が48万円から68万円に増えても、所得税の課税所得は233万円から213万円に下がるだけで税率10%の区分に収まる。区分をまたがないので上限額も動きません。効きはじめるのは令和8年分、つまり2026年中の寄附から。まだ申告を通った人がいない年分の話です。

なお「住民税の基礎控除は43万円で据え置きだから、ふるさと納税の上限額には影響しない」という説明も見かけます。入口の住民税の課税所得が動かないのはそのとおりですが、本サイトが確認した範囲では、そうした説明は所得税の税率の区分が切り替わることにも、人的控除差調整額の定義にも触れていません。この経路まで踏み込んだものが見当たらない、というのが実際のところです。

この節の位置づけ(大事なところ)
  • ここに書いたのは本サイトが条文をこう読んだという内容です。所得税の基礎控除の引上げと控除上限額の関係について、税務当局が個別に見解を示した資料は確認できていません
  • 全員の上限額が下がるわけではありません。所得税の税率の区分をまたぐ人で下がり、またがない人はほとんど動きません
  • 確かめ方は2つ。住民税の課税決定通知書の所得割額から逆算する(次の章に手順があります)か、お住まいの市区町村や税務署に確認する
  • 変わるのは所得税そのものの額です。基礎控除が増えれば課税所得が減るので、納める所得税も、確定申告したときの還付の出方も変わります。これは上限額とは別の話です

高額寄附の側では、2027年から伸びに天井がつく

ここまでは給与収入1,000万円までの話。その上の帯について、総務省が公表している推計がこちらです。独身または夫婦共働き・給与収入のみ・住宅ローン控除などを受けていない前提のモデルケース推計で、個人の上限額を断定するための表ではありません。

給与収入特例控除額(上限)所得税等も含めた寄附上限額
1,000万円12万円18万円
2,000万円32万円57万円
5,000万円93万円211万円
1億円193万円438万円
3億円593万円1,346万円
5億円993万円2,254万円
10億円1,993万円4,524万円
出典:総務省「ふるさと納税について(指定基準に係る告示改正)」令和8年3月24日 p.8(改正前の特例控除額)

収入が10倍(1,000万円→1億円)になると、寄附上限額は18万円から438万円へ。10倍ではなく24倍です。所得税率が累進で上がるぶん特例分の式の(100% − 10% − 所得税率)は小さくなるのに、土台の住民税所得割額の伸びがそれを上回る。この構造が、改正の理由になりました。

令和9年(2027年)の寄附分から、特例控除額に193万円の上限が新設されます。193万円は上の表でいう給与収入1億円相当の水準です。

  • 上限がつくのは特例控除額であって、寄附額そのものに上限がつくわけではない
  • 特例控除額の上限を超えても、基本分の控除は適用される
  • 適用は令和9年の寄附分から。今年分の計算には影響しない

給与収入1億円に届かない人にとっては、当面は関係のない話です。制度改正の全体像は2026年10月からの制度改正と2027年の控除上限にまとめています。

シミュレーションの答えが割れる理由と、使い分け

冒頭で書いた「入力項目の数」を、具体的に見ておきます。

ふるなびの場合、給与収入と配偶者控除の有無だけ入れる「簡易シミュレーション」と、扶養家族の人数・社会保険料・医療費控除の金額まで入れる「本格シミュレーション」の2種類が用意されています。この記事の目安表は、粒度でいえば簡易のほうに近い。以下の条件がある人は、数字が動きます。

医療費控除を使う年は、上限が下がる

ふるなびの解説では、医療費控除との併用でふるさと納税の控除額が少なくなる幅は、目安として医療費控除額の2%から4.5%程度とされています。医療費控除が20万円なら、おおよそ4,000円から9,000円のあいだ。医療費控除で所得税率の区分そのものが下がる年は、影響はもっと大きくなります。

住宅ローン控除がある年は、影響が読みにくい

住宅ローン控除は所得税から大きく引かれ、引ききれない分は住民税からも引かれます。ふるさと納税の控除と引き合う位置にあるので、影響は医療費控除より大きくなりやすい。

ただし「住宅ローン控除で所得税が0円になったから、ふるさと納税は意味がない」と決めるのは早い。ふるなびも、住宅ローン控除を受けたあとでも住民税の控除上限に達していなければふるさと納税の控除は受けられる、と書いています。諦める前に、本格シミュレーションで住宅ローン控除の条件込みの数字を出したほうが早いです。

どこまで詰めるかの線引き

  • 給与収入だけ・他の控除なし → この記事の目安表か、簡易シミュレーションの数字で足ります
  • 医療費控除・初年度の住宅ローン控除・副業の所得がある → 本格シミュレーション。それでも出るのは目安です
  • 1円単位で詰めたい → 総務省は市区町村への問い合わせを案内していますが、前に引いたとおり自治体が答えられない場合もあります。確実に教えてもらえる前提では動かないほうがいい

正直なところ、上限ぎりぎりまで攻める意味は薄いです。年末にボーナスや副収入で所得が動けば上限も動くので、少し余裕を残して着地させたほうが結果的に読みが当たります。

目安から一歩進めるなら、住民税の通知書の「所得割額」から逆算する

ここまでの表は、前提を10個置いた目安です。自分の数字に寄せたいなら、前提を置かずに済む材料が1つだけあります。住民税の課税決定通知書。そこに載っている所得割額は、あなたの所得と控除で実際に計算された結果だからです。

会社員なら6月ごろに勤務先から配られる住民税決定通知書、自分で納めている人は自治体から届く納税通知書。所得割額は市町村民税分と道府県民税分に分かれて書かれているので、合計します。

限度額を止めているのは住民税特例分の2割の壁なので、所得割額さえ分かれば逆算できます。特例分の上限は〈住民税所得割額 × 20%〉。これを前の章の割合表で割り戻すと、寄附額が出ます。

逆算の式(概算)

寄附額の目安 = 住民税所得割額 × 20% ÷ 特例分の割合 + 2,000円
割合は84.895% / 79.79% / 69.58% / 66.517% / 56.307%…(=90% − 所得税の税率 × 1.021)

例:所得割額が30万円・所得税の税率10%の区分にあたる場合
300,000 × 20% = 60,000円(特例分の上限)
60,000 ÷ 0.7979 = 約75,200円
75,200 + 2,000 = 約77,000円

目安表の数字と桁が合っているかは、これで確認できます。ただし、あくまで概算です。ずれる理由は3つ。

  • 手元の通知書は前年の所得にもとづく額なので、今年の所得が動いていれば当然ずれます
  • 割合が半端な数字なので、電卓では端数が出ます。1,000円単位に丸めた時点で数百円ぶんの誤差は残ります
  • どの割合の区分に入るかは〈住民税の課税総所得金額 − 人的控除差調整額〉で決まるので、通知書の所得割額だけでは区分を特定しきれません

桁が合っているかを見るには十分で、1円単位の根拠には使えない。この距離感で付き合うのがちょうどいいです。

上限のあたりがついたら、決める順番を間違えない

上限の目安が出たら、次にやることは2つだけです。

  1. 枠の大きい返礼品から先に決める。金額の張るものを後回しにすると、残りの枠で選べなくなります。金額帯が広いのはふるさと納税の家電のあたりです
  2. 申し込んだあとの手続きを確認する。寄附しただけでは控除されません。ワンストップ特例か確定申告のどちらかが必要です(ふるなびで申し込んだあとのワンストップ特例・確定申告の手続き)

ポータル選びから見直したい人はふるなびの評判と使いどころもどうぞ。

入力は給与収入と家族構成から。扶養・社会保険料まで入れる本格版もあります

限度額でよく引っかかるところ

この記事の表の金額を、そのまま使って大丈夫ですか?

桁とおおよその位置をつかむには使えます。ただし社会保険料を給与収入の15%と仮定するなど10個の前提を置いた目安なので、住宅ローン控除・医療費控除がある年、副業などの所得がある年はずれます。実際の寄附額を決めるときは、シミュレーションか住民税の所得割額からの逆算で確かめてください。

所得税の基礎控除が上がったので、限度額も増えますか?

増えません。本サイトが条文を読んだかぎりでは、むしろ令和8年分から下がる人が出ます。特例分の計算で差し引く人的控除差調整額は、地方税法第37条の2第11項第1号で〈第37条第1号イの金額〉+〈所得税の基礎控除 − 48万円〉と定義されていて、所得税の基礎控除の引上げを取り込むためです。所得税の税率の区分が下がるとその分を住民税の特例分が肩代わりし、特例分は所得割額の20%で頭打ちになるので、より小さい寄附額で上限に届きます。年収500万円・独身の試算では、令和6年分以前・令和7年分が61,000円、令和8年分が57,000円。よく見る61,000円が誤りなのではなく、年分が切り替わって変わったということです。ただし税務当局が個別に見解を示した資料は確認できていません。気になる場合は住民税の課税決定通知書の所得割額から逆算するか、お住まいの市区町村・税務署にご確認ください。

上限を超えて寄附したらどうなりますか?

寄附自体は成立します。超えた部分が控除されずに残るだけです。総務省も、特例分が住民税所得割額の2割を超えた場合は3つの控除を合計しても全額は控除されず、実質負担額が2,000円を超えると明記しています。

限度額はいつの収入で決まりますか?

寄附した年(1月1日〜12月31日)の所得です。つまり12月31日まで確定しません。年の途中でシミュレーションに入れる年収は見込み額になるので、転職・昇給・ボーナスの増減があった年ほど数字は動きます。控除が実際に反映されるのは翌年度の住民税からです。

住宅ローン控除を受けていてもふるさと納税はできますか?

できます。ただし控除できる額は影響を受けます。住宅ローン控除で所得税が0円になっていても、住民税側の控除上限に達していなければ控除は受けられます。なお初年度の住宅ローン控除は確定申告が必要なので、その年はワンストップ特例が使えません。

自治体に聞けば正確な上限額を教えてもらえますか?

総務省は具体的な計算について市区町村への問い合わせを案内していますが、同時に「お住まいの自治体によって、控除の対象となるふるさと納税額の上限はお答えできない場合があります」とも書いています。回答が得られない前提でも動けるよう、余裕を持った金額で組むのが現実的です。

結局どこを見ればいいか

限度額の数字だけを追うと、サイトごとの違いに振り回されて終わります。押さえるのは5点です。

目安ではなく自分の実額で出したい場合は、源泉徴収票の数字に置き換える手順にまとめました。早見表を年収と家族構成で引きたいだけなら限度額早見表の記事のほうが早いです。

  • 年収別の目安は上の表のとおり。ただし社会保険料の置き方1つで数千円動く。総務省のモデルケースとも約3,000円ずれます
  • 限度額=2,000円の自己負担で収まる寄附額の上限。超えた分は寄附として残るだけで、手続きが無効になるわけではない
  • 止めているのは住民税特例分の2割の壁。ここを越えると自己負担は2,000円を超える
  • 医療費控除・住宅ローン控除がある年は、簡易な計算では合わない。条件を入れて出し直す
  • 令和8年分(2026年中の寄附)は、所得税の基礎控除の引上げで上限額が下がる人がいる。よく見る金額が誤りなのではなく年分が切り替わったという話なので、去年の数字をそのまま使い回さず出し直す

ここに書いた金額は、総務省・国税庁の公表資料と地方税法の条文をもとに、前提を明示して本サイトが令和8年分の制度で計算した目安です。条文の読み方についての記述も、本サイトの解釈を根拠つきで示したものです。控除額は所得・家族構成・その年に使う他の控除で変わるので、特定の個人の上限額を保証するものではありません。税額そのものの判断が必要なときは、お住まいの市区町村や税務署に確認してください。


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この記事を書いた人

ふるさと納税の制度と実務を、総務省の告示やポータル各社の公表情報といった一次情報をたどって検証している編集チームです。控除上限額の考え方、ワンストップ特例と確定申告の使い分け、返礼品の選び方まで、根拠を示しながら整理しています。なお当サイトは株式会社アイモバイルが運営するものではなく、第三者が運営する情報サイトです。

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